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![]() 第2回『第3回声楽アンサンブルコンテスト全国大会観戦記』
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『感動の歌声 響け、ほんとうの空に』をテーマに、 第3回声楽アンサンブルコンテスト全国大会が 3月20日(土)〜22日(月)に福島市音楽堂で開催され、 私は1日目午後の中学校後半から高校の前半、2日目の高校後半と一般 そして2日間の部門大会で見事金賞を受賞したそれぞれ3団体、 合計9団体のチームが出場した3日目の本選まで、 この大会をたっぷりと聞いてまいりました。 まず驚かされたのは、福島市音楽堂ホールの素晴らしさでした。 正面の美しいパイプオルガンにも目を奪われたのですが、 このホールが持つ独特の響きにまさに耳を奪われました。 その魅力の秘密はタイル張りの内壁から生み出される 「石の響き」なのでした。 その響きのなんと心地よいこと・・・、 残響時間が長いから素晴らしいのではなく、 響き方自体が実に美しいのです。 舞台上の演奏者はどんなにか楽しいだろうと、本当に羨ましく思いました。 さて、演奏内容あるいはこのコンテスト全体についてですが、 実に!まさに!本当に!ハイレベルでした。 それは毎年聞かせていただいている コンクール(特に全国大会)的な意味での「ハイレベルさ」ではなく、 もっと根源的な意味での“音楽的素晴らしさ”の「ハイレベルさ」でした。 特に総合1位(何と2年連続!!)に輝いた 郡山第ニ中学校には舌を巻きました。 演奏曲はモーツアルトの「ミサ・ブレヴィスKV.275」だったのですが、 8人の弦楽合奏、S,A,T,Bそれぞれのソリスト、 そして12人の合唱団は総勢24人の演奏でした。 演奏途中、何度も「本当にちゅう が く せ い ??」 と目をこすってみましたが、間違いなく全員が中学生でした。 が、その演奏は圧巻!!としか言いようのない素晴らしいものでした。 こどもたちの素晴らしい演奏を よくわれわれは「中学生(高校生)とは思えない」と表現しますが、 そんなありきたりな言葉では言い尽くせないハイレベルさで、 心から感動しました。 大袈裟ではなく、奇跡を目の当たりにした思いでした。 どうすればこんなことができるのか、 是非指導をされている先生にお目にかかってお話を伺ってみたいものと、 同じ音楽教育に携わる者としても強く思いました。 ただ、郡山ニ中はこの演奏だけでなく、 NHKコンクール、全日本合唱コンクールと 全国にその名を知られた学校ですから、 言ってみれば凄いのは当然のことなのかもしれません。 しかし、ある意味、もっと感銘を受けたといってもいいのが 秋田北高校でした。 この学校も合唱では以前から知られた学校です。 ところが、今はなんと女の子5人だけの合唱部なのだそうです。 で、高校部門では最も少人数のその5人全員での出演でしたが、 掛値なく素晴らしいアンサンブルコーラスで、 ひょっとしたら本選に進むのではないか と思ったほどの感動的な演奏でした。 そして結果は堂々の銀賞! 驚いたのはこの秋田北高だけでなく、中学校部門や高校部門で 7チームも一ケタの人数で出場したチームがあったことでした。 同じ中学校の同級生で作ったメンバーで出場した 大阪の高校合同チームの演奏も素敵でした。 有名指揮者顔負けの素晴らしい指揮をしていたのも そのメンバーの一人でした。 全日本合唱コンクール全国大会などで見(聞き)慣れている、 特に中学・高校部門の“豪華で圧倒的な”合唱団は、 一般的な学校現場の教員の感覚では「特殊な別世界のもの」で、 実は10人以下で細々と合唱活動を行っているところが ほとんどなのではないでしょうか。 「コンクール出場資格は8人以上」の、 その8人すら集まらない学校がいっぱいある、 というのが現実だと思います。 だからそういった場所で合唱活動をする団員や指導者にとっては、 いわゆるコンクール(コンテスト)に出場することは、 特に心理的に大変高い障壁となっているように思われます。 分かりやすく言えば「どうせダメ・・・」という感覚が先に立ってしまい、 おざなりのことしかできていないのではと、 私自身の反省も込めて思いました。 そして、この大会からは反省以上にとても勇気をいただきました。 少人数コーラスの面白さ・素敵さ・そしてその可能性は 大人数合唱になんら劣るものではないこと、 それとともにそういった団体の指導者は、 勇気を持って“本気で”合唱活動に取り組んでほしいこと、 このことをもっとアピールすることで、 合唱運動の可能性がもっと見えてくるような気がしてなりませんでした。 一般部門では31チーム中、11チームが一ケタ人数での出場で、 たった4人で出場したチームが2つもありました。 そういえば第1回の総合1位は、 福井の麻生津小学校の女の子5人組でしたし、 今回もご家族4人(ソプラノお母さん、アルトお嬢さん、 テナー息子さん、ベースお父さん)で出場され、 見事審査員特別賞を獲得されたこのチームも、 微笑ましいという理由だけではない、 演奏自体が素晴らしい、とても印象に残ったものでした。 中部支部から出場したそれぞれのチームは、 私が聞けたチームはどこも好演をしていましたし、 見事上位入賞したチームもあってよかったのですが、 正直、何か今一つ物足りなさが残りました。 それはいわゆる“本気度”の問題なのかも知れません。 あくまでも「合唱」は「合唱」であり、 アンサンブルはアンサンブルにしか過ぎないのだ、 という感覚があるような、ないような・・・?? “よそさま”、特に東北方面はもっと本気だ、 ということは間違いなく言えると思います。 この大会は、演奏内容は勿論、 運営等どれをとっても文句のつけようのない大会でした。 本物の音楽文化を育てようという地域、 そして行政のその考え方には心から敬服しましたし、 それに見事応えている福島県のみなさん、 特に指導者の先生方には本当に頭が下がりました。 また、「合唱音楽」というより、 音楽そのものの楽しさ素晴らしさを再認識した3日間でした。 機会がありましたらもう一度聞きに行きたいと思いますし、 是非みなさんも一度聞きに行かれることをお勧めします。 最後に余談をすこし・・・、 全てのチーム(3日間で100チーム以上)に コメントを書かなければならなかった審査員の先生方は 本当に大変だったと思います。羽根先生、本当にご苦労様でした。 ロシアから出場した16人のお嬢さんたち、 まるで妖精のように可愛い女の子たちでした。 見事本選まで残り、とても嬉しく思ったのは 私だけではなかったと思います。 郡山ニ中の本選演奏終了直後に起こった 会場からの「ブラボー!!」と、 それに続くスタンディング・オベーション、 私は「コンクール(コンテスト)」と名のつくところで、 こういった光景に初めて出会いました。 福島に到着した第1日目は“初夏”、2日目は“嵐”、 そして3日目は雪景色・・・、3日間で半年分の天候を味わいました。 |
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2010年3月25日 記 |
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